竹資源有効活用プロジェクト
1.鹿児島県はモウソウチクの産地
モウソウチクは、本来中国原産であり琉球から薩摩へ持ちこまれ、現在の磯庭園に移植され、そこから株分けされ生育可能な地域へ広がっていった。
モウソウチク林面積は、鹿児島県が日本一でありその中でも川内川流域は、モウソウチクの産地であり、宮之城地域を中心とした川内川流域では、竹加工産業が発展してきた。鹿児島県のモウソウチクは、竹加工材として肉厚があり、そりが少なく品質の良いモウソウチクの産地である。
2.竹資源有効活用プロジェクトの意義
川内川流域で発展してきた竹林文化が、生活習慣の変化やタケノコの輸入の増加、竹林加工職人、タケノコ生産者などの高齢化が進み竹林の管理が行われず放置林となっている。現在、モウソウチクのチップ化や竹炭、竹酢液の生産、伝統的な竹加工品の生産、農林水産における割竹、割竹防風垣に活用されている状況である。
モウソウチクは、一年で成長点に達し、三年で成竹になり五、六年で老竹となるため、毎年間伐を行わないと竹林密度が高くなり、外へ広がり、畑やスギ、ヒノキ人工林に侵入し竹害となる。
鹿児島県のモウソウチク林は、本来人工林であるため適度な管理が必要である。自然再生事業の推進として循環型土木資材の導入が望まれており、自然に優しい伝統的土木工法として、竹柵工、竹垣工、竹沈床工、竹暗渠工、竹柵工護岸などへの活用が考えられる。循環型土木資材として鹿児島県のモウソウチクを大量に活用することにより、本来のモウソウチク林となり竹害、倒木は減少すると思われる。
3.竹ソダロール、竹ソダパネルの提案
- 五、六年物の間伐期のモウソウチクは、耐久性、強度が高く竹ソダロールに適している。
- 一本のモウソウチクから約3本の竹ソダロールが生産できる。
- 一本のモウソウチクの葉以外はすべて活用して生産できる。
- モウソウチクの枝は竹ソダパネルとして活用する。
- 伝統的竹柵工を手軽に施工できる。
- ジョイントができる構造になっている。
- 竹編柵工のように竹を曲げることが無いため耐久性、強度は保たれる。
- モウソウチクは、シロアリの害は無いが竹虫の害が考えられる。
- 竹虫対策として梅雨時期の伐採を避ければ、竹虫の害は少なくなる。
- 庭園材料の建仁寺垣の構造、考え方で竹ソダロールは生産されている。
- 竹加工職人の伝統的技が生かされている。
- 通常、建仁寺垣は屋外で七、八年で交換の時期となる。
4.竹ソダロールの特徴
- 標準規格 φ90×L2,250 (林務水産の木柵工φ90と同規格)
- φ90以上としてφ100、φ150、φ200は、特注生産できる。
- 先端部が、凹凸になっておりジョイントできる。
- φ90の一本あたりの重量は、青竹の時約9kg、乾燥した時約7kgである。
- 曲げ試験最大荷重2.1kN(2.1kN以上で曲がり始めるが割れなかった)
- 部分圧縮試験縮み40mm荷重4.3kN(竹の繊維が圧縮され強度は上がる)
- 耐久性としては経験上7年から8年と考えられる。(現在3年経過)
- 青竹の場合、梅雨時に竹カビが発生し、その後薄黄色から灰色へ変色する。
- 乾燥し灰色へ変色するが強度は維持され衝撃を加えなければ形態は維持される。
- 竹ソダロールは、水中においては、腐食の進行は少なく耐久性は高くなる。
- 竹ソダロールは、三重構造になっている。(クズ割竹+麻布+成形割竹)
- 成形割竹30mmを連結し約5mmづつ隙間をつくり麻布を露出してある。
- 5mmの隙間に土が付着し雑草が生えやすい形態にしてある。
- 竹ソダロールの形態が維持される七~八年において雑草の根が絡み緑化されて、竹ソダロール本体は、時間をかけ自然へ戻す考え方である。
- 自然の回復力にゆだね自然再生を行うものである。
- 竹ソダロールは、竹、麻布、麻ひも、鉄線で製造されており、自然環境に負荷のかかる素材は使用していません。
- 竹職人が、一日一人で約50~60本鹿児島県内で手作りで製造しています。
- 年間一人で、約12,000本製造できる体制ができています。
- 生産本数が増えれば増えるほど単価は下がります。
- 竹林間伐のボランティア、地域NPOとの連携により竹材の購入ができる。
5.竹ソダパネルの特徴
- 竹ソダロールの残材のモウソウチクの枝材を活用したパネルです。
- 竹垣、防風垣、堆砂垣として製品化しています。
- 規格は、自由に決められます。
- 竹ソダパネルは、土砂流失防止柵工としても利用可能である。
- 本来、竹枝は土砂中のシルトを吸着する性質を持っており、造成中の土砂流失の防止の仮設材として利用されてきた。
- 仮沈砂池の濾過材としても竹枝ソダは、活用できる。
- 竹チップ業者、竹炭業者においても竹枝は不要であり、大量に山に放置されている状況である。
- 安価で入手可能な竹枝を、竹職人、竹ぼうき職人の技術を借りてパネル化およびロール化したものである。
- 耐久性としては、7~8年と思われる。
6.鹿児島県のモウソウチク活用による地場産業の育成
- 鹿児島県内及び川内川流域を中心とする竹産業の活性化を図る。
- 竹材伐採業者の事業拡大が図れる。
- 竹材加工業者の新しい製品化への取り組みができる。
- 新しい物流の資材の創出による事業への参加がはかれる。
- シルバー人材の雇用の創出が図れる。
- 川内川流域の竹街(竹林村)の活動の継続が図れる。
- 鹿児島県のモウソウチク林の再整備が進むことにより、タケノコ生産業者の竹材の二次的活用が図れる。
- 地場のボランティアの育成及び地場NPO団体との連携が図れる。
7.鹿児島県から全国へ竹資源有効活用の情報発信
- 公共事業への竹資源の有効活用を図り、地場産業の育成と地域の環境整備とが一体化した新しい地域の取り組みを全国へ情報発信し、自然再生事業として竹材の循環型土木資材の導入を図る。
- ほとんど無限といえるモウソウチク林を地域の財産として活用し、高齢化した竹材加工産業の活性化を図り、若者たちの事業化への積極的な参加をはかる。
- 竹ソダロール、竹ソダパネルに続く新しい資材の開発を行う。
- 竹害の無い優良な里山の再生を図り、豊かな自然環境を提供する。
- 川内川流域の地域の取り組みが、全国の竹害対策のモデルケーになり、各県で地域の活動ができるようにする。
- 鹿児島県(薩摩)からモウソウチクが広がったように、モウソウチクの新しい活用方法を、鹿児島県から全国へ情報発信する。
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